2013年3月10日日曜日

アダナスからロープをつくる

アダナス、とは海岸沿いの砂浜などに生えているアダンという木の気根のこと。繊維を細く裂いてから縄をなって、クリ船のアンカーロープとして使ったり、潮干狩りのときに履く草履(池間の方言で”フダミ”)を編んだり、採った貝を入れたりするかごをつくったりして、とても重宝していたそうです。なにより、海水に浸すほどに強くなるというので、海の島の暮らしに欠かせない素材だったことがわかります。

そんな暮らしの知恵や技を残し、あたらしく生かしていくための取り組みを始めようとしています。
今日は、島の漁師、上原義勇さんと一緒にアダナスを収穫して「縄ない」の練習をしてきましたので、その様子をレポートします。


まずはアダナスの収穫へ…アダンが生えているのはこんなところ。

茂みの奥に発見したアダナスを狙って、生い茂ったアダンの下を這っていく上原さん。とはいえ、アダンの葉は固く、葉のふちと裏側に鋭いトゲがあるため、茂みを潜り抜けるのは一苦労です。

収穫したアダナスはこんな感じ。根っこの先が砂に届き、少し砂に埋まっているくらいのものが上等なんだそうです。昔はみんながアダナスを採って使っていたので、こんなに大きなものはなかったそう。
アダンは、葉もまきとして使用していたそうですが、池間島内でアダンがなくなると狩俣・島尻地域(池間の方言で”フズマ”=大きな島)にもこっそり採りにいっていたという昔話をよく聞きます。

採ってきたアダナスは、カマですすーっと皮をむいていきます。

簡単そうに見えますが、力の入れ具合がとても難しい。

皮をむいたら、今度は繊維に沿って薄くスライスしていきます。

浜辺でのんびり、波の音を聞きながら。しかし手元は止まることなくさっさっとリズムよく動きます。

「薄ければ薄いほうがいいさぁ」といいながら、だいだい厚さ1ミリくらいに切れ込みをいれたところ。切れ込みを入れてから、手で裂いていきます。

薄くスライスしたら、天日で一気に乾燥させます。
ここで雨に濡らしたり、日陰干ししてしまうと、色も黒くなり、繊維の強度も落ちてしまうで要注意です。
(干している途中で雨に濡らしてしまい、黒いシミだらけになったアダナスを持っていったときには「これじゃだめさ」と怒られました)

乾燥したら、海水に浸して湿らせてからさらに細かく繊維を裂いていきます。(写真は「これじゃだめさ」と言われたシミだらけのアダナス・・・)

細い繊維になったら、もう一度海水に浸してから縄をなっていきます。手で撫でているだけでみるみる間に縄がなわれていきました。まるで魔法のよう・・・! 上原さんは、小学3年生のころにおじぃからアダナスのこしらえ方を習ったのだそうです。それ以来自分では作っていなかったといいますが、今日久しぶりにやってもこの器用さには驚きました。

こちらでは、上原まさ子さんがガジュマルの葉っぱで帽子をつくってくださいました。 「学校からの帰り道に、女の子たちは葉っぱを編みながら帽子をつくって、家までかぶって帰っていたさ」

左がアダナスでなった縄。右がガジュマルの葉っぱの帽子。今みても、とてもおしゃれで素敵です。

帽子にするにはもっと大きく作るのだそうですが、頭にのせてみるとこんな感じ。
キジムナーの帽子みたいです。

日陰に腰かけて手仕事をしながら、昔のくらしや島の伝説のはなし、海のはなしなどいろんなお話を聞かせていただきました。島を訪れて、島のおじぃやおばぁたちとこんな時間を過ごすことができたら、それはとてもぜいたくな時間かもしれません。 次回は、アダナスでなった縄をつかってフダミやかごの編み方を習いたいと思います。上原義勇さん、まさ子さん、どうもありがとうございました。