今年1月23日に豊見城市中央公民館で開催された「第34回県老人の意見発表大会 (主催・県老人クラブ連合会)」にて、いけま福祉支援センター副理事長の儀間利津子が「地域と共に」と題して池間島の取り組みを発表し、見事最優秀賞に輝きました。
故郷池間島に向けたあたたかいまなざしと、私たちの取り組みに対する熱い想いが伝わる内容となっております。多くの皆様にご紹介したいと思いますので、この場に発表原稿を掲載いたします。
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2014年1月24日 宮古新報
2014年1月24日 宮古毎日新聞
地域と共に 池間学区 儀間利津子
「さあ、今日も元気に行くぞ」毎朝そう自分に言い聞かせながら、私はハンドルをしっかり握りしめ勤務先の我が故郷池間島に車を走らせます。家から狩俣地区までの目に映る見慣れた風景、さして気にもせず。しかし、西平安名崎、西の浜、池間島へと道路が分岐した場所が近ずくと私はドキドキします。そこは池間大橋の架かる紺碧の海に抱かれた美しい池間島の姿が一望できるからです。あー癒される。この島に生まれて良かったと心からそう思うのです。昨年還暦を迎えた私が今でも故郷に仕事ができることを幸せに思います。
小規模多機能型居宅介護事業所きゅーぬふから舎が私の職場です。そこには島の大先輩でもあり子供の頃からお世話になった方達が利用者さんとなって日々過ごしています。彼らの笑顔、元気なあいさつ、毎日の「ありがとう」の感謝の言葉を掛けられることで本当にやって良かったと嬉しく思います。そして、この島に介護事業所を創ることを夢見、実現に向け、共に頑張ってきた仲間(あぐ)達の事を誇りに思います。
私が子供の頃島は豊な島でした。鰹操業で活気に満ち溢れ島も人も輝いていました。しかし、時は残酷です。時代の流れと共に鰹業は衰退していきました。そして学業に勤しむため、又漁業に見切りをつけ島外に職を求めて若者達が島を出て行きました。いつしか高齢化と過疎化の島となってしまいました。残された年老いた親たち。でも島で生まれ育ち暮らし続けてきた島民は皆親戚のようなもの。高齢者にとっても隣近所と支えあい助けあって変わらない日常を送ってきました。
しかし、加齢と共に病気になり不自由さから島外の病院や施設に入所する高齢者が増え始めました。ひとたび島から離れると、戻ってくるのは遺骨となってから。高齢者が島を離れるということは死を意味することなのです。島を離れていく友人を見送る者にとっても明日は我が身かもしれないと不安を抱えて生きていくのです。施設に入れるのは経済的に余裕のある方。島の高齢者の殆どが僅かな年金暮らし。余裕のない人は這ってでも身の周りはしなくてはならない。介護保険料は平等に納めているのに。介護サービスが平等に受けられない。このような現状を知った私たちは行動を起こしました。平成14年今から11年前の事です。
この島で生まれ育ち暮らし続けた高齢者が安心して穏やかな日々が送れるようにしてあげたい。仲間たち(あぐ)の奮闘のおかげで、きゅーぬふから舎は平成18年に開所しました。今25名が利用しています。利用者さん全員が島民です。ヘルパーさんも皆島民です。だから、大家族のように毎日が賑やかです。島らしく池間島にしかできないものをみんなの力をかりてみんなで創りたい。島人が毎日楽しく笑って暮らしてほしいという願いから(きゆーぬふから舎)」と名付けました。今日も楽しいね嬉しいねという意味です。そして島人の思いを理念にしました。
〈かなーだんぎーまい、やぐまりーまい、すまどうじゃうかい、かまぬゆーんかいや 、ーぬたたみぬはなから〉
働けなくなっても、病気になっても、島が一番いい、あの世への旅立ちは、住み慣れた我家の畳の上から
きゅーぬふから舎を利用出来た方は島の高齢者率45%以上からするとほんの一握りです。今、島では介護予防のための取り組みが島全体で行われています。元気な高齢者が集う「生き生き教室」や元気な高齢者を主体とした「民家宿泊体験」です。島外からの修学旅行生を受け入れ、それぞれの民家さんで農業、漁業体験をしてもらい食事の準備も家族と一緒に作って食す。そして家庭料理や生活のさまざまな知恵を教えてもらう。高齢者も無理せず、ありのままの暮らしを維持しながら地域社会における「役割」を獲得することができる。
民泊事業は23年度からスタートしましたが実際に目に見えて効果は出ています。民泊を受ける前の高齢者は、日々の生活の中で、このような事をポツンと漏らす。「自分は役立たずだ。何の生甲斐もない。早く迎えが来ないかね」と。しかし、孫、ひ孫のような子供達を受け入れるようになって表情が明るくなりました。経済的にもちょっと余裕ができました。なにより高齢者を元気づけたのはは子供たちが別れ際に目に涙を浮かべ、話したことでした。
「おじい、おばあ又来るからね。」「彼女ができたらおばあに見せにくるからね」「結婚して子供ができたら、おばあに会いにくるからね」と。何と嬉しい有難い言葉。この私は必要とされている。10年、いや15年は長生きしたいと思うようになる。素敵な事だと思いませんか。高齢者の心が暗から陽に変わっていったのです。このような高齢者を一人でも多く増やしていきたいと、若い元気な頼りになるスタッフと日々頑張っています。
泣くも人生、笑うも人生ならば楽しく笑って生きて行こう。高齢者の皆さん、あなたの役割は必ずあるはずです。
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