2017年8月16日水曜日
【アダンサミット2日目】アダンを語ろう編
アダンサミット2日目、第1部は「アダンを語ろう~歴史・自然・文化」。
様々な切り口から、少し専門的な話も織り交ぜてテーマを掘り下げてみようと、4名の先生方に集まっていただき、それぞれの分野でご報告をいただきました。
企画当初、アダンサミットについて先生方にご相談したところ、手弁当でも協力してくださるということでなんと!全員自費で池間島まで駆け付けてくださいました。(ありがたや・・・)
トップバッターは、ゲッチョ先生こと、沖縄大学の盛口満先生。「アダン好き?」というタイトルで、琉球列島の様々な地域における植物利用の多様性についてのお話をしていただきました。
シマによって、よく利用されてきた植物も様々。池間島のようにアダンをよく利用するところもあれば、与那国島のようにクバが使われるところもあり、奄美などではソテツが主に利用されてきたことなど、いろいろな地域で調査をされてきたことをご報告いただきました。
そして、つい先日訪れたインドネシアでは、食べ物に色をつける「イロアダン」とにおいをつける「ニオイアダン」なるものがあることも教えていただきました。
続いて、NPOいけまより三輪大介が「歴史に刻まれるアダン」というタイトルで報告。
王府時代、海岸や河岸にアダンが植栽され、「海垣(防風防潮林)」を形成し、同時に土壌流出を防止する「地面格護(土壌保全)」が行われてきたこと、これらの技術体系が蔡温の「抱護」という考え方に基づいたものであったこと、歴史の中でも繰り返し植栽が行われ、アダンを中心とする海岸林は先人たちが必死に「残してきた」ものであることなどを報告。
続いて、北九州市立大学の竹川大介先生、NPOいけまの木下靖子による、「フツナ島のアダン」。南太平洋のパンダナス文化について、現地の生活のようすやさまざまなアダン利用の例を紹介していただきました。なんと、竹川先生はピジン英語という現地で使われている言葉でプレゼン。それを木下が通訳するという形で報告したのでした。
フツナ島では、アダン葉を使ってとても精緻なバッグを編んでいたり(竹川先生が背負っているものは、最新モデルのリュックタイプ)、アダナスでエビ採りかごを作ったり、ツガキを薪として使ったりと、アダンと人々の深いかかわりが現在でも残されているとのこと。
南太平洋の島々の中でも、紹介していただいたバヌアツ共和国のフツナ島の方々が作るバッグが一番細かく編まれているのだそうです。ふちの部分は1mmくらいの細さに裂いたアダンバで細かな模様が編まれており、この模様の編み方で、だれが作ったものかわかるのだとか。
続いて、琉球大学の渡久地健先生からは、「絵画と文学にみるタコノキ属」というタイトルでご報告いただきました。
渡久地先生は、ご専門はサンゴ礁地理学ですが、文学や芸術関係にも大変造形が深く、今回はこちらの方面からご報告いただくことになりました。
スライドには、一枚一枚アダンやタコノキが扱われている絵画が埋め込まれていて、そちらも大変興味深いのですが、特に印象的だったのは「南島歌謡」に謡われているアダンに着目して紹介していただいた報告でした。新城島の「ざんとぅりぃゆんた」(ジュゴンを獲る唄)では、「山をあるいてアダナスを切って、ユウナ(オオハマボウ)の皮を剥いで、干して、縄をなって網をつくりなさい・・・」という唄から人々の暮らしや営みが見えてくるようでした。
最後に、当山昌直先生による「オカヤドカリからアダンへ」というご報告。
超自然の精神世界におけるアダンやアマン(オカヤドカリ)について、創世神話に登場するアダンのお話、先人の時代からずっとそばにあるものであることなどを報告していただきました。
とても盛りだくさんな内容で、時間もオーバーしてしまいましたが、アダンに特化した内容でこれだけ様々な報告を聞かせていただいた、中身の濃い第1部でした。参加者のみなさんからも、各地域のアダンのお話や、興味深い質問などたくさんのコメントをいただきました。
当日会場でお配りした資料はこちらからもご覧いただけます。1日目の報告とあわせて、ご参照ください。
さて、アダンサミットはこの後第2部「アダン手業ワークショップ」へと続きます。
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